そぞろ歩き-002 本田静六著「耐乏生活の実践」 

「ブログ」ならば、頻繁に更新すべきところ、かと言って毎日更新と言うのも...。

仕事以外の雑事にも追われ、結局1つのみの投稿で一月も終了。


そんな折、たまたま書架から手にした古本に気になる文章があったので少しだけご紹介。(昭和19年出版、本田静六著「耐乏生活の実践」から)


「私は文章が下手で、自分の思想を直ちに紙に寫すことに非常な努力を要したのである。それ故、私は印刷の価値ある文章を毎日一頁以上宛書く行を二十五歳の末から始めたのである。勿論初めは苦しく、且つ、旅行などする時、非常に努力しても規程頁に達する事が出来なかったが、努力を生活の信条とする私は、やがてそれをも克服し 一度筆を以って心を一点に集中すれば 興味自ら湧き来りて、何か書かざれば物足らざる衝動に駆られ 不知不識、規程頁を遥かに超越するという境地に達し得て、夏休み、その他の休暇、十数日の臨時的な旅行などによって、書き溜めも出来るようになったのである。かくの如き習慣は今日に至る迄依然として続行せられ ついに大小三百六十餘種の著書を公刊するという成果を得たのは、実にその日その日の脳漿をしぼれる精神的苦行の賜であり、一冊の著述のいかなる頁を開く時も、たゆまざる著者の精神的研磨の足跡がみよみがえり来るものであり、 これ悉く耐乏的精神生活の諸さんであると信ずる次第である。」


明治神宮の森を設計し今日の「自然林」を創造したことでも有名な本田静六博士は慶応2年7月生まれ。この著作の出版年である昭和19年4月時点で52歳。25歳から始めた著述も28年間で360余冊を公刊とある。ということは、平均して年12.85冊≒月1冊ペースというから驚く。

終戦前年に刊行された「耐乏生活の実践」には興味深いライフスタイルも描かれており、折に触れて紹介予定。

 

2020年02月12日